ガスコンロの火

アンチ・オール電化

ミュージカル「ロミオ&ジュリエット」

感想
東宝のロミジュリみてきました。13年の方を見てなかったので初のロミジュリです。
2013年(再演)のパンフレットで演出家の小池修一郎氏は、
「物語の普遍性を強調するため、時代を現代に移そうとした。本当はSF的近未来を想定し、第三次世界大戦でいびつになった世界を描きたかったが、大震災が起こり破壊や崩壊のイメージが描きにくかった」と語っています。
今度の新演出ではそのボツになったアイデアが使われたようです。


よくスマホ演出(笑)と揶揄される小池修一郎演出のロミジュリですが、そこまで現代風のアレンジには違和感はなかったです。
アナログなロレンス神父がガラケーユーザーだったり、両親が厳しいジュリエットが18歳になるまで携帯を持たせてもらえなかったりと、ガジェットにより役の設定が浮かび上がるような良い使われ方をしていると思いました。


考えたこと*1
・ベンヴォーリオと乳母
ロミオとジュリエット、ティボルトとマーキューシオがシンメだとしたら、ベンヴォーリオと対になるのは乳母だと思います。

乳母やベンヴォーリオはジュリエット、ロミオの親友であり理解者であると同時に、作中で乳母はジュリエットにロミオとの結婚の知らせを、ベンヴォーリオはロミオにジュリエットの死を知らせるというメッセンジャーの役割を負っています。また、乳母はパリスとの結婚について態度を翻すことでジュリエットを(ある意味)殺してしまうし、ベンヴォーリオはジュリエットの死を伝えることでロミオを死に追いやってしまう。その後悔と罪悪感が霊廟のシーンでは2人に滲んでいるように思いました。

乳母とベンヴォーリオは引き離されたロミオとジュリエットの手を繋ぎ直し、両家の和解を促すのが印象的。また、最後の「エメ」大合唱で葬いの蝋燭を悲しみにくれるキャピュレット夫妻にベンヴォーリオが手渡すという演出が本当に大好き。きっとベンヴォーリオは親友たちが世を去ったヴェローナで1人生きていくんだろうと思うと、つい好きになってしまいそうになります。


・ティボルトとマーキューシオ
「仮面舞踏会」のシーンで、マーキューシオは顔を隠しているのをいいことにティボルトにちょっかいを出しまくります。この時ティボルトはジュリエットの順調に進展する結婚話にやきもきして死ぬほど余裕がないので、絡まれる度にブチきれていて面白いです。でも、どうしてマキュはここまでしてティボルトを憎むんだろう?マキュは大公の甥であっても、モンタギューの生まれではないので別にキャピュレットを憎む理由はないんですよね。でも明らかにマキュはロミオやベンヴォーリオよりも過剰にキャピュレットを憎んでいる。わたしはその理由はマキュのティボルトへの私怨と、外野であるマキュがモンタギューに馴染むために派手に反キャピュレットの態度を取っているのかな…と思いました。マキュ、身体小さいから子供の頃ティボルトとかにいじめられてたりしたのかな…してないかな……(自信がない) ただ、当のティボルトはロミオに対する憎しみで頭がいっぱいで、マキュには叔母上との関係を揶揄されるまで興味なさげなのがなんとも………


キリスト教的要素
我々が信心深くないように、現代に生きるロミジュリの登場人物だって信心深くなくたっていいと思う。別に現代版にするならば、キリスト教の要素を取り除いても構わないだろうに(むしろその方が現代風だ) どうしてこんなにもキリスト教のモチーフが物語に出て来るんだろうと不思議でした。 *2

最後の「エメ」大合唱で、「死」は十字架の上で悶え苦しむ。「死」が犠牲になったように、あるいは人々の罪を背負うために遣わされたキリストの様に、ロミオとジュリエットヴェローナの平和のために犠牲になるべく神に遣わされたのではないか。
ロミオとジュリエットが出会って爆速で恋に落ちるのも、神の意志あってのものと思うと納得がいく*3

「平和の祈り」という祈祷文がある。
「主よ、私をあなたの平和の道具としてお使いください。
憎しみのあるところに愛を、
諍いのあるところに許しを、
(中略)
絶望のあるところに希望をもたらすことができますように」

ある意味、ロミオとジュリエットはこの「平和の道具」なのではないかと思います。
2人の亡骸を見つけた神父は「2人が結ばれてヴェローナに平和が訪れるはずだった、なのに何故神は見捨てられたのか?」と嘆きます。しかし、神は決して2人を見捨てたのではなく、そうあるべくして悲劇的な結末にたどり着いたのではないかと思いました。*4
あまりにもキリスト教に寄った解釈かもしれません、原作がまさに宗教が支配していた中世に書かれた作品だから許してほしい…何より、こう解釈することでしかロミジュリの爆速すぎる恋愛の進展を理解できなかった……



今回、ダブルキャストの組み合わせを変えて何度か観劇したのですが、それぞれのキャストで役解釈がかなり違い、それによって物語の印象が大きく変わりました。やっとダブルキャストの醍醐味を味わうことができました。何度見ても楽しかった。再々々々演を楽しみにしています。その時はどんな若手が配役されるんだろう。

好きな役者が素晴らしい楽曲と演出家の元、最高の演技を見せてくれる、こんなに幸せなこともおたく人生の中ではないですね。おたくでよかった。

*1:全て私の解釈です、あしからず

*2:原作がそうだからでは?

*3:気がする

*4:アルターボーイズを観劇したせいかやけにキリスト教付いてます