ガスコンロの火

アンチ・オール電化

「髑髏城の7人 Season月 下弦の月」

髑髏城、というか劇団☆新感線は前からちょっと気になっていていつか見られたらいいな〜くらいに思っていたのですが、2.5次元のオタクをころっと転がせるような「下弦の月」のキャスティングにより初めての新感線の観劇となりました。エンタメ度モリモリで面白かったです。

◆あらすじ
織田信長亡き後、かつて信長の部下であった男が「天魔王」として「関東髑髏党」を率いて秀吉の天下統一によりつかのまの平和が訪れた世の中に戦乱を起こそうとしていた。素浪人の捨之介は、一族を天魔王に殺された霧丸や遊郭経営者の蘭兵衛らとともに天魔王に立ち向かうのであった。

◆キャストについて
・捨之介(宮野真守)
すごく宮野真守だった!宮野さんは声も表情も動きも主張が激しくて、誰にも忘れられない印象を残す方だと思っていたのですが、今回はその宮野さんらしさと、捨之介の鮮やかな生き様とが重なりあうようでした。過剰なまでの生気も存在感が(わたしが宮野さんの話をするとついトゥーマッチという語彙を使い過ぎてしまう)どんどんすり減ってズタボロになっていく終盤との対比が凄かったです。歌舞いたポーズを取った時にちらりと覗くワイン色の襦袢がめっちゃ印象的。

・天魔王(鈴木拡樹)
わたしは鈴木拡樹さんのドスが効いた声がすごく好きなので天魔王の第一声聞いてヨシッ!ってなった。声優の宮野さんは当然ですが、下弦のキャストは皆声がよく通る上、声色の違いで誰が喋っているかわかりやすくて見やすかった。で、鈴木さんの話に戻るんですが、ものすごく華奢なのに「魔王」として殺戮の限りを尽くすさま、むしろ華奢だからこそその異様さが際立ったのでは?と思いました。無界屋で人を殺すたびに愉悦の表情が浮かぶのが恐ろしかったです。連番した相手が、鈴木さんについて「VS嵐で見た時とイメージが全然違って、鈴木さんだと最初気づかなかった!」と言っていてさもありなんだと思います。カテコではける時にマントをばさあっ!とするのも大変に良き。

・蘭兵衛/廣瀬智紀
蘭兵衛はオタクが好きそうな要素(美丈夫闇落ち裏の顔持ち女衒*1…)をコテコテに煮詰めたようなキャラだと思うのですが、そこに廣瀬智紀さんが充てられることで最強になってしまった。わたしは年1くらいで廣瀬さんの出演する舞台を見ては「廣瀬智紀さんの顔良すぎない?」と発狂するのですが、どうやら今年もちゃんともの旬が来たようです。とにかく顔が良い。それから動作にいちいち華と色気があってドキドキします。髑髏城に乗り込んでいくシーンで横笛を吹きつつ歩くという動作があったのですが、あまりにもそれが美しすぎて牛若丸だー!と思いました。あと闇落ちするシーンのアレ、トートとルドルフのアレ*2みたいじゃないですか。わたしはトートルドルフで気が狂いそうになったのですが、きっと髑髏城を見て同じような感慨を抱いた人もいると思います。とにかく廣瀬さんの蘭兵衛はノー思考で脳みそに浸透する「美」なのでみんな見て、髑髏城を。

◆劇場について
「客席が回る劇場」のステアラですが、正直お芝居を見るという点ではかなり出来が悪いと思います。普通の劇場では後方席に向かってゆったり傾斜がつくことで、ある程度の視界を確保しているのですがステアラは舞台の高さが低すぎるので、自分より前に座っている人間の頭の塊が舞台にめっちゃ被るんです。また、列自体は30列までしかないのにとにかく舞台までの距離が遠すぎる!ぐるぐるするのは良いけど本当に見にくいし、没入感を妨げるのでそれは残念でした。前方座ればいいのかな?それでも、一律13000円という価格を取っている以上もう少しまともな設計にして欲しかったです。本当にクソオブクソ。よくアイアがクソ劇場としての槍玉に挙げられますが、アレは視界は良好なので許容範囲です。ステアラはプレハブだし見えないし僻地だし空調おかしいしでどうかしてる。ただ、客席回るのはやっぱり面白いです。
カーテンコールで一周ぐるっと回っている様子を見せてくれるのですが、どのセットとどのセットが隣り合っているのかが種明かしするようで楽しかったです。セットは本当に凝っていました。お芝居の背景は捨象することでないものをあるように認識させますが、ステアラではセットの移動がないぶんものすごく凝ったセットが作れるんですね。まるで映像作品のような工夫の凝らされた舞台美術は本当に見ていて飽きないです。ちなみに、わたしはこの下弦を二日酔いでボロボロのグロッキーの状態で見に行ったのですが、回転が入るたびに脳みそがフラフラしてかなりきつかったです。

◆まとめ
正直あまり脚本を咀嚼しきれていないのと、なんせコンディションが最悪な状態で観劇したので(2017年最悪だった)みなさんが「一瞬だった!」という公演時間は結構長く思えました。面白いのですが、普通は「序破急」の構成だとすると髑髏城は「序破破破破破破急急急急急急急急」くらいのノリなので、だいぶ疲れます。そもそも一幕1時間半、二幕2時間という上演時間はだいぶエクストリームです。今回消化しきれなかった部分と、それからオペラを忘れてしまい見きれなかった部分があるのでもう一度行きたいのですが、ステアラはウンザリ…という気持ちが拮抗しています。多分でももう一度見にいく気がします。*3

ちょくちょくチケット戻りあるようですし、ど直球のエンタメで楽しいですし、何よりお馴染みの役者さんが出演してらっしゃるので、機会があれば是非。あ、もし行くなら何かとマチソワとかにしないことをお勧めします。

*1:本当はこの表現適切じゃない気がするけどね

*2:ミュージカル エリザベート

*3:今回ステアラの悪口の部分が1番長くなっちゃった